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10年動きのない口座はどうなるか(休眠預金)

10年間まったく動きのない預金は「休眠預金等」になり、預金保険機構へ移管されます。
移管された時点で、その預金の債権はいったん消滅します
「休眠口座」と呼ばれることもありますが、法律上の呼び名は休眠預金等です。

ただしお金が取り上げられるわけではありません
移管されたあとも、取引のあった金融機関の窓口で期限なく引き出せます

「休眠預金等」とは10年動きのない預金

根拠は2016年12月9日に公布された休眠預金等活用法です。
同法第2条第6項が、休眠預金等をこう定義しています。

この法律において「休眠預金等」とは、預金等であって、当該預金等に係る最終異動日等から十年を経過したものをいう。 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律 第2条第6項

起算点は「最終異動日等」、つまり最後に動きがあった日です。
金融庁は、2009年1月1日以降に最後の異動があった預金等が原則として対象になると案内しています。

条文の「異動」は、人事異動のことではありません。
その口座に入出金などの動きがあったことを指す、この法律の用語です(第2条第4項)。
金融庁は同じことを「入出金等のお取引」と言い換えています。

何をすれば「動きがあった」ことになるか

どの事由が「異動」に当たるかは、施行規則が2段階で定めています。
この2つは扱いが違います

異動とされる事由(休眠預金等活用法施行規則 第4条第2項・第3項)
区分 事由
必ず異動
(第4条第2項)
引出し・預入れ・振込みの受入れ・振込みによる払出し・口座振替などによる残高の増減
手形・小切手の提示など第三者による支払の請求
公告の対象になっている預金について、預金者が情報の提供を求めたこと
異動に準ずる事由
(第4条第3項)
通帳・証書の発行、記帳、繰越
残高の確認の求め
契約内容・顧客情報の変更
口座を借入金の返済に利用する旨の申出
口座の情報に関する通知の受領

下段の「異動に準ずる事由」は、金融機関が行政庁の認可を受けている場合に異動として扱われます(同条第4項・第5項)。
認可の有無は金融機関ごとに異なるため、「記帳しておけば大丈夫」とは一律には言えません
確実なのは、上段の入出金です。

認可を受けた事由は各金融機関が公表することになっているので、取引のある金融機関で確かめられます。

金融機関が付ける利子は、異動になりません
第4条第2項が金融機関側の入出金から利子等の支払を除いており、金融庁も原則として異動に該当しないと案内しています。
利子が付き続けていても、10年は進みます。

対象になる金融機関

休眠預金等活用法第2条第1項は、対象となる金融機関を16の類型で列挙しています。
そのうえで「この法律の施行地外に本店を有するものを除く」という限定を付けています。

対象になる金融機関(休眠預金等活用法 第2条第1項)
扱い 金融機関
対象 銀行・長期信用銀行
信用金庫・信用金庫連合会
信用協同組合・信用協同組合連合会
労働金庫・労働金庫連合会
商工組合中央金庫
農林中央金庫
信用事業を行う農業協同組合・同連合会
信用事業を行う漁業協同組合・同連合会・水産加工業協同組合・同連合会
対象外 日本に本店がない銀行の在日支店(外国銀行)
列挙されていない業態(証券会社・資金移動業者など)

銀行法上の銀行はすべて含まれるため、ゆうちょ銀行も信託銀行も対象です。
農業協同組合・漁業協同組合は信用事業を行うものに限られます
信用事業を他へ譲渡した組合は、この列挙に当てはまりません。
業態ごとの違いは「金融機関の種類」にまとめています。

預金保険の対象範囲とは一致しません
預金保険と貯金保険は制度が2つに分かれていますが、休眠預金等活用法は1本の法律で両方の対象預金を扱っています(「預金保険で守られる単位」)。

対象になる預金の種類

預金保険・貯金保険の対象になる預貯金が、休眠預金等になりうる「預金等」です。

休眠預金等になりうるか(金融庁の公表資料による。商品名・呼称は金融機関により異なる)
扱い 預金等の種類
なりうる 普通・通常預貯金/定期預貯金/当座預貯金/別段預貯金/貯蓄預貯金/定期積金/相互掛金/金銭信託(元本補填のもの)/金融債(保護預りのもの)
ならない 外貨預貯金/譲渡性預貯金/金融債(保護預りなし)/財形貯蓄/仕組預貯金/マル優口座

2007年10月1日の郵政民営化より前に郵便局へ預けられた定期性の郵便貯金は、この「預金等」に該当しません
定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金がこれにあたり、独立行政法人郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構が扱います。
民営化で何が分かれたのかは「郵便局とゆうちょ銀行の歴史」で説明しています。

2009年より前に止まっている口座は、この制度の対象外

30年前の通帳が出てきた、というような場合です。
最後の取引が2009年1月より前なら、その預金は休眠預金等になりません。

2009年1月以降に最後のお取引などの異動があった預金等が原則として本制度の対象になりますので、それ以前に最後の異動があった預金等は、本制度の対象外です……なお、こうした預金等についても、通常、金融機関は、引き出しに応じております。 金融庁「休眠預金等活用法 Q&A(預貯金者の方などへ)」Q2

制度の外にあるだけで、お金が無くなったわけではありません
この場合の扱いは金融機関ごとに決まるので、取引のあった金融機関に問い合わせることになります。

ただし郵便局の古い通帳は別です。
次の節で説明します。

郵便局の古い通帳は、権利が消滅することがある

ここまでの話と正反対の制度が1つだけあります。
郵政民営化前(2007年9月30日以前)に預けられた定期性の郵便貯金は、期限を過ぎると払い戻せなくなります

預入期間満了日の翌日から20 年間払戻し等のお取扱いがない場合に、お客さまに「権利消滅のご案内(催告書)」を送付させていただき……「権利消滅のご案内(催告書)」の送付の日から2 か月内に、お客さまから払戻しのご請求がない場合には、該当の郵便貯金の権利は消滅し、払戻しができなくなります。 郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構「郵便貯金の権利消滅等に関するQ&A」A1

満期から20年2か月という期限です。
廃止された旧郵便貯金法第29条が、民営化前に預けられたこれらの貯金には今も効力を持つためです。

古い郵便貯金の扱い(郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構の公表資料による)
扱い 対象
権利が消滅する 2007年9月30日以前に預けた定期性の郵便貯金
(定額郵便貯金・定期郵便貯金・積立郵便貯金・住宅積立郵便貯金・教育積立郵便貯金など)
消滅しない 2007年9月30日以前に預けた通常郵便貯金・通常貯蓄貯金(ゆうちょ銀行に承継された)
2007年10月1日以後に預けた貯金

自動継続扱いの定期郵便貯金にも注意が必要です
民営化前に預けたものは、民営化後に来る最初の継続日で満期になっており、そこから先は自動継続していません

通帳や証書が見当たらなくても払戻しの手続きはできます。
郵便局の貯金窓口またはゆうちょ銀行の店舗で、貯金があるかどうかを調べる「現存調査」も依頼できます

民営化の前と後で何が変わったのかは「郵便局とゆうちょ銀行の歴史」にまとめています。

移管されるまでの流れ

10年を過ぎたその日にいきなり移管されるわけではありません。
9年を過ぎた時点で公告と通知の手続きが始まり、公告から2か月を経過したあとに移管されます。

移管までの手続き(休眠預金等活用法 第3条〜第7条)
いつ 何が起きるか
9年経過 金融機関が公告の義務を負う。
期限は最終異動日等から10年6か月を経過する日まで
公告の前 預金者へ通知を発する。
ただし元本1万円未満は通知が不要
10年経過 休眠預金等になる
公告から2か月〜1年 金融機関が休眠預金等移管金を預金保険機構へ納付する
金融庁は「公告を開始した日から2ヶ月〜1年の間に移管が行われます」と案内している
納付の日 預金等に係る債権が消滅する

通知が不要になる1万円という額は、施行規則第7条第4項が定めています。
9年を経過した日の元本がこれに満たない口座には通知が届きません
公告だけが行われます。

通知は、預金者が金融機関に届け出た住所または連絡先に宛てて発すれば足りるとされています。
引っ越して住所変更を届けていない口座は、通知が届かないまま手続きが進みます

金融機関が納期限までに納付しなかった場合と、10年6か月を経過する日までに公告しなかった場合には、年14.5%の延滞金・過怠金が課されます(第5条)。

移管されても、期限なく引き出せる

債権が消滅すると書きましたが、お金が戻らなくなるという意味ではありません。
休眠預金等活用法第7条第2項が、消滅した債権のかわりに「休眠預金等代替金」を請求する権利を定めています。

当該休眠預金等に係る預金者等であった者は、預金保険機構に対して主務省令で定めるところによりその旨を申し出たときは、預金保険機構に対し、当該債権のうち元本の額に相当する部分の金額に主務省令で定める利子に相当する金額……を加えた額の金銭……の支払を請求することができる。 民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律 第7条第2項

請求は、預金保険機構から委託を受けた金融機関を通じて行います(第7条第4項)。
つまり手続きの窓口は元の金融機関です。

金融庁は、引き出す期限についてこう案内しています。

期限はありません。いつでも引き出すことができます。 金融庁「長い間、お取引のない預金等はありませんか?」

通帳やキャッシュカードを紛失していても、本人確認書類があれば引き出せます。
預金者が亡くなっている場合は、金融機関所定の手続きを経て相続人が引き出せます

ただしATMでは手続きできず、窓口で通常より時間がかかることが想定されます
現金で受け取るのか元の口座をそのまま使えるのかは金融機関によって異なります。

どれだけ移管され、どれだけ戻っているか

預金保険機構は、毎年度の移管額と払戻額を公表しています。
移管の実績がある2019年度から2025年度までの7年間です。

2018年度の移管額は0円・0件でした
附則第2条が、この法律を「施行日以後に最終異動日等から九年を経過することとなる預金等」について適用すると定めているためです。

移管された額払い戻された額の推移(2019〜2025年度・億円)
休眠預金等移管金と休眠預金等代替金の推移(預金保険機構の公表資料による。億円未満切り捨てのため、各年度の合計と累計は一致しない)
年度 移管 払戻し
2019年度1,457億円
724.2万件
45億円
4.0万件
2020年度1,408億円
718.3万件
188億円
19.2万件
2021年度1,374億円
687.2万件
252億円
27.9万件
2022年度1,528億円
707.0万件
350億円
38.7万件
2023年度1,609億円
711.4万件
456億円
46.1万件
2024年度1,694億円
631.6万件
522億円
50.9万件
2025年度1,870億円
587.0万件
587億円
54.5万件
7年の累計 10,943億円
4,767万件
2,404億円
241万件

7年間で10,943億円・4,767万件が移管され、そのうち2,404億円・241万件が払い戻されています。

1件あたりで見ると差がはっきりします。
移管される口座の平均は22,958円、払い戻される口座の平均は99,619円で、4.3倍の開きがあります。
残高が大きい口座ほど取り戻されている、ということです。

移管の件数は724万件から587万件へ減った一方で、額は1,457億円から1,870億円へ増えています
1件あたりの平均が20,123円から31,871円へ上がったためです。

払戻額には、その年度より前に移管された分に対する払戻しも含まれます。
同じ年度の移管額と払戻額を割っても、その年に移管された預金がどれだけ戻ったかにはなりません。

移管されたお金は何に使われるか

預金保険機構は、移管金から代替金の支払に備える準備金と必要経費を差し引いた額を休眠預金等交付金として、内閣総理大臣の認可を受けた指定活用団体に交付します(第8条)。
指定活用団体には、2019年に内閣府の公募により一般財団法人日本民間公益活動連携機構(JANPIA)が指定されています。

そこから資金分配団体などの中間支援組織を通じて、社会課題に取り組む実行団体へ渡る、という流れです。

役所の担当も分かれています。
金融機関から預金保険機構への移管と預貯金者への返還は金融庁民間公益活動の促進のための活用は内閣府が担当します。

よくある質問

亡くなった家族の古い通帳が出てきました

預金者が亡くなっている場合、金融機関所定の手続きを経て相続人が引き出せます
通帳やキャッシュカードを紛失していても、本人確認書類があれば手続きできます。

古い通帳の場合は、まず最後の取引がいつかで扱いが分かれます。
2009年1月より前で止まっていれば休眠預金等ではなく、金融機関ごとの扱いになります。
郵便局の定期性の貯金であれば、権利が消滅している可能性があります(上の2つの節)。

通知が届きました。放っておくとどうなりますか?

この通知を受け取ること自体が「異動」になります
金融庁は「この通知を受け取ることで、その後の10年間は休眠預金等になりません」と案内しています。
通知が届いた時点で、いったん10年の数え直しになるということです。

残高が少なくても休眠預金になりますか?

なります。
金融庁は、休眠預金等になる預貯金の額に基準は「ありません」と明記しています。
1万円という額は通知を出すかどうかの基準であって、対象になるかどうかの基準ではありません。

公告に自分の口座番号や名前が載るのですか?

載りません。
公告に掲載されるのは最後の異動の日や移管の期限などで、個別の預金者が特定される情報(口座番号を含む)は掲載されません
公告は電子公告なので、各金融機関のウェブサイトで見られます。

他人に引き出されることはありませんか?

なりすまして支払を受ける目的で通帳などを譲り受けた場合や、その目的を知って譲り渡した場合には、休眠預金等活用法の罰則(1年以下の懲役、100万円以下の罰金など)が適用されます。
このほか刑法上の詐欺罪が成立する場合があります。

自分の口座が休眠預金になっているか調べるには?

取引のあった金融機関に問い合わせます。
金融機関は、預金者から公告の対象になっている預金について情報の提供を求められた場合、その求めに応じなければならないと定められています(第3条第4項)。
なお、この求め自体が「異動」に当たります。

どこの金融機関か分からない口座があります

通帳やキャッシュカードに手がかりがあります。
カードに印字された数字から金融機関を特定する方法は「カードの金融機関コード記載場所」にまとめています。
名前しか分からない場合は「金融機関コードの調べ方」から検索できます。

預けた金融機関が合併してなくなっていたら?

預金等に係る債務を承継した金融機関が手続きの窓口になります(第10条第1項)。
合併で金融機関コードがどう扱われるかは「合併・改称で金融機関コードはどうなるか」で説明しています。

休眠預金になると利息はどうなりますか?

代替金の額は、元本に主務省令で定める利子に相当する額を加えたものです(第7条第2項)。
金融庁は、これを「元の預貯金契約どおりの額が支払われます」と説明しています。
利子等の生じない預金等については、加算される額は零とされています。

金融機関が代わりに手続きしてくれますか?

原則としてできません。
第7条第3項は「金融機関は、前項の申出について預金者等からあらかじめ委任を受けることができない」と定めています。
ただし、消滅がなかったとしたら異動に当たる事由が生じたことを条件とする委任は例外とされています。

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