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内国為替制度運営費とは?

他の金融機関あてに振り込むと、振込手数料がかかります。
その金額の内側には、振込を送る側の金融機関が、受け取る側の金融機関に支払う費用が含まれています。
これが内国為替制度運営費で、1件あたりいくらかは全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が公表しています。

2021年9月までは、これにあたる費用が銀行間手数料と呼ばれ、40年以上にわたって金額が変わっていませんでした。
2021年10月1日に廃止され、内国為替制度運営費に置き換わっています。
2026年10月1日には、置き換わってから最初の改定が適用されます。

誰が誰に支払う費用か

全銀ネットは、内国為替制度運営費を「内国為替制度を安定的に運営するため、仕向銀行から被仕向銀行に対して支払われる費用」と説明しています。
仕向銀行は振込を送り出す側、被仕向銀行は振込を受けて受取人の口座に入金する側です。

受け取る側にも仕事があります。
為替通知を受け取り、口座を確認し、入金処理を行い、入金できなかったときには照会や組戻しに応じます。
内国為替取扱規則は、為替通知が全銀センターから被仕向銀行の店舗へ30分以内に送達されることを標準とし、受取人の口座への正確かつ迅速な入金処理を求めています。
この処理に必要な費用を、送り出した側が負担するという建て付けです。

全銀システムそのものの費用とは別勘定です。
全銀システムの費用は、システムベンダーへの月々の支払額を全加盟銀行が件数などに応じて按分して負担する方式で、1件ごとに課金する体系ではありません。
全銀ネットは、この点を「諸外国の決済インフラで見られる1件ごとに課金する料金体系とは異なる」と説明しています。

1件あたりの金額

金額は為替取引の種類や金額にかかわらず一律です。
振込金額が1,000円でも100万円でも変わりません。

1件あたりの金額の推移
適用期間と名称 1件あたり(税抜)
2021年9月30日まで
銀行間手数料
3万円未満 117円
3万円以上 162円
2021年10月1日から
2026年9月30日まで
内国為替制度運営費
62円
2026年10月1日から
内国為替制度運営費
61円

内訳も公表されています。
62円は被仕向対応コスト50円為替事業利益相当分12円、61円は被仕向対応コスト49円為替事業利益相当分12円です。

被仕向対応コストは、被仕向処理とその安全性・利便性の向上に要するシステム費・人件費・物件費・全銀システム経費などを加盟銀行に対して調査し、その総額を為替取引の総件数で割った金額とされています。
為替事業利益相当分は、経済産業省の「企業活動基本調査」の利益率をもとに算出されています。

一律とされている一方で、例外もあります。

  • 給与・賞与の振込は設定対象外(無料)
    労働基準法上、賃金の通貨払いの例外として口座振込が認められていることを踏まえ、受取人である労働者の利便性に影響しないようにするためとされています。
  • 国庫金・公金は2024年10月1日から適用開始
    仕向銀行にあたる指定金融機関側の対応・調整に期間を要することを踏まえ、他より3年遅れて始まりました。

2021年9月まで=40年以上変わらなかった「銀行間手数料」

全銀システムが稼働した1973年4月から1977年12月までは、全銀ネットの前身である内国為替運営機構が各加盟銀行に対して通達した額が使われていました。
1977年12月に通達が廃止されてからは、内国為替取扱規則により銀行間の相対の交渉で決定することとされていました。

ところが2020年4月の公正取引委員会の調査では、アンケートに回答したすべての銀行が同じ額を設定していました。
3万円未満の振込で117円(税抜)、3万円以上の振込で162円(税抜)です。
公正取引委員会は「遅くとも昭和54年2月以降、現行の水準以外の銀行間手数料が用いられていた事実や、本調査開始までの期間において、いずれかの銀行が銀行間手数料の水準を変更するための交渉を行った事実は確認できなかった」としています。
昭和54年2月は1979年2月のことで、調査の時点で40年以上前です。

銀行間手数料の決定方法(銀行向けアンケート・回答129行)
回答内容 銀行数
相手行ごとに相対の交渉により決定している47(36.4%)
慣習的に用いられている額を用いている38(29.5%)
全銀ネット等から提示された額を用いている37(28.7%)
その他4(3.1%)
未回答3(2.3%)

「相手行ごとに相対の交渉により決定している」「慣習的に用いられている額を用いている」と答えた銀行へのヒアリングでも、交渉は事実上行っておらず、過去に内国為替運営機構が通達していた水準をそのまま使っている、という回答が得られています。
報告書には、次のような銀行の発言がそのまま載っています。

銀行間手数料について、当行は、過去に内国為替運営機構に提示された金額を一律に使っている。銀行間手数料の水準について他行と交渉を行わなかった理由やその水準の妥当性について考えたことはない。

見直しが決まるまでの流れ

発端は、キャッシュレス決済の普及でした。
店舗への売上金の入金も銀行振込で行われるため、振込手数料の負担が普及の障害になっている、という問題意識です。

銀行間手数料の廃止までの経過
時期 できごと
2020年4月公正取引委員会が実態調査報告書を公表。銀行間手数料は「実際に発生している事務コストを大きく上回る水準」と指摘
2020年7月17日成長戦略実行計画を閣議決定。全銀ネットが定める仕組みに統一し、引下げを実施すると明記
2021年3月18日全銀ネットが理事会で内国為替制度運営費の創設を決定。銀行間手数料は廃止
2021年10月1日内国為替制度運営費(62円)の適用開始
2024年10月1日国庫金・公金にも適用開始
2025年10月16日全銀ネットが61円への改定を公表
2026年10月1日改定後の61円の適用開始

成長戦略実行計画は、銀行間手数料について次のように書いています。

振込手数料の背景にあるコストの相当部分を占め、40年以上不変である銀行間手数料につき、その見直しを図る。見直しに当たっては、全国的な決済ネットワークインフラを安定的かつ効率的に運営する観点から、全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)が定める仕組みに統一し、コスト構造の見える化を行いつつ、コストを適切に反映した合理的な水準へ銀行間手数料の引下げを実施する。

金額と算定方法が公表されるようになったのも、この見直しの一部です。
全銀ネットは、ステークホルダーを加えた検討会を設けたうえで、為替取引1件当たりのコストや、内国為替制度運営費の水準・算定方法の対外公表に取り組んでいます(公正取引委員会「フィンテックを活用したサービスに関するフォローアップ調査報告書」による)。

利用者の振込手数料は下がったのか

公正取引委員会が2023年3月に公表したフォローアップ調査に、この点を直接尋ねた結果が載っています。
銀行間手数料の廃止と内国為替制度運営費の創設を理由とする振込手数料の値下げについて、回答した118行のうち112行(95.0%)が値下げを行ったと答えました。

銀行間手数料の廃止を理由とする振込手数料の値下げ(銀行向け書面調査・回答118行)
回答内容 銀行数
値下げを行った112(95.0%)
値下げを行わなかった6(5.0%)

値下げ幅も、廃止前後の差額とおおむね対応しています。
銀行間手数料と内国為替制度運営費の差額は3万円未満で55円、3万円以上で100円です。
公正取引委員会は、多くの銀行が各振込方法について50円以上値下げしたと回答していることから、少なくとも3万円未満の振込の差額と同程度の値下げが行われたことがうかがわれる、としています。

一方で、3万円を境に振込手数料を区分している銀行は残っています
公正取引委員会は、内国為替制度運営費が62円に統一されたにもかかわらず区分が維持されている理由として、銀行間手数料が適用されていた頃からの慣習、振込手数料を一本化するためのシステムコストが膨大にかかること、区分の統一は必ずしも値下げにつながらず値上げを伴う可能性があること、の3点を挙げています。

内国為替制度運営費となったにもかかわらず当行が3万円を境に振込手数料を区分しているのは、振込手数料を一本化するためのシステムコストが膨大にかかるからである。
振込金額に応じた手数料区分の統一は、必ずしも手数料の値下げにはつながらず、値上げを伴う可能性もあることから、顧客への影響を加味し、改定を見送ってきた。

公正取引委員会は、慣習に基づいて合理的な理由なく区分を維持している場合には、システム改修のコストや顧客への影響を十分に勘案しつつ、見直しを検討すべきである、としています。

なお、これは回答した銀行に対する書面調査の結果であり、すべての金融機関を数えたものではありません。
実際の振込手数料は金融機関ごとに異なるため、金額は振込元の金融機関の公式サイトで確認してください(→ 「銀行振込のやり方」)。

2026年10月1日から61円へ

内国為替制度運営費は、5年に一度、被仕向対応コストと為替事業利益相当分を算定したうえで見直すことになっています。
2025年10月16日、全銀ネットは62円から61円への改定を公表しました。
適用開始は2026年10月1日です。

下がったのは被仕向対応コストの側で、50円から49円になりました。
為替事業利益相当分は12円のままです。
次回は2030年度に見直しを行い、2031年10月から適用する予定とされています。

同じ金融機関あての振込では発生しない

内国為替制度運営費は、定義上、仕向銀行から被仕向銀行に支払われる費用です。
振込を送る側と受け取る側が同じ金融機関であれば、支払う相手方の金融機関は存在しません。
同一の金融機関内で完結する振込は本支店為替と呼ばれ、金融機関どうしの資金決済が発生しないため、全銀システムを通りません。

これは支店の話ではなく、金融機関の話です。
支店コードが違っていても、金融機関コードが同じであれば本支店為替になります。
金融機関コードが違えば他行為替になり、全銀システムを経由して、仕向銀行から被仕向銀行へ内国為替制度運営費が支払われます。

同じ金融機関あての振込手数料が安い、あるいは無料であることが多いのは、この違いも背景の一つです。
振込先の金融機関コードが自分の口座と同じかどうかは、当サイトの検索で確認できます。

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